2012年12月31日月曜日

来年もどうぞよろしくお願いいたします

ゆすらの干支の辰年の香りは、
爽やかな香りでしたが、
皆様の辰年、いかがでしたか?
今年の紅白は、美輪さま率いる
もも組、ほんとは白組ですが、
ご本人が仰っていたもも組と
いうのが、やはりよいですね(笑)。

週に一度はアップするつもり
だったのですが、11月半ば以降、
どうも更新が遅れ気味。
反省中です。

来年は、大阪の雑魚寝館様に
お納めしたアオ鰻の香りからの
予定です。
って、書いておかないと、また、
遅れるし~。

残り少ない平成24年=の2012年、
皆様にとって、素敵な時間であり
ますように。

来年も、どうぞよろしくお願い
いたします。

                                     今井麻美子

2012年12月24日月曜日

池袋東武百貨店『日本の職人展』出展のお知らせ

ブログ更新を怠っております・・・。
ちょっと、バタバタとしており、PCに
真面目に向き合う時間がなかなか
どうしてな、感じでして・・・。

この間の空いた更新が、お知らせで
恐縮ですが、お知らせです。

来年、1月9日より、池袋は西口の
東武百貨店池袋店8Fにて開催される
『日本の職人展』に出展いたします。

来年の干支、巳年の香りは、手描友禅の
袋に入り、お部屋の飾りとしてもお楽しみ
いただけます。

また、オーダーメイドの香りもお受けいた
ますので、世界に一つの香りで新しい年
弾みをつけて頂けたら、と思ったり。

その他、様々な香りもご用意しております。

他にも、日本各地の職人さんによる美しく
素敵な作品が沢山です。

ぜひ、この機会にお越しくださいませ。

皆様のご来場、心よりお待ちしております。


『日本の職人展』
期間:1月9日(水)~15日(火)

場所:東武百貨店池袋店8F催事場(1~3番地)
      東京都豊島区西池袋1-1-25
      03-3981-2211(代表)
      http://www.tobu-dept.jp/ikebukuro/

営業時間:午前10時~午後8時
※最終日は午後5時にて閉場いたします。

年内、これにてブログ終了ではなく、頑張り
たいと思います~。

クリスマス寒波押し寄せるこの冬、
皆様、どうぞ体調にはお気をつけてください
ませ~。

2012年12月5日水曜日

コピ・ルアック(麝香猫珈琲)

もう、かれこれ4年以上も前になる
のでしょうか。お墓参りの帰り、
谷中銀座をぷらぷらしていたところ、
弟が『コピ・ルアック』の看板文字を
見つけ、「これ、この間、テレビで
やってて、旨いらしい」というので、
満満堂という珈琲屋さんに入って
みることに。

コピ・ルアックとは、麝香猫珈琲の

こと。映画の中でも最高の珈琲と
して、色々と出ているみたいですね。

香原料の麝香は、雄の麝香鹿の香嚢
です。
このために育てられています・・・。
フェロモンの塊です・・・。
その昔、江戸時代には代用品として、
鼠やら象やらと色々と育てたようです。

麝香を持つ名前の生物に、ジャコウ
アゲハがいますが、これは、幼虫の
時に、あの緑色の体から麝香の
匂いがするから、その名前になった
そうですが・・・。食べているものがね、
ビックリでした。
これは、また別の機会に。

さて、コピ・ルアック。
コピ・ルアックはインドネシア産の
コーヒーです。インドネシアには
麝香猫が生息しているのですが、
この猫達ったらチェリーと呼ばれる
コーヒー豆が、もう、大・大・大好き!
(チェリーと聞くと、うる星やつらの

錯乱坊を思い出してしまうのは、私
だけでしょうか・・・。)

で、大好きだから、殻付きのまま
ガンガン食べます。ていうか、食い
ます的な(笑)。

でも、コーヒー豆の殻は大変に固い
ので、猫の体内を通過しても、未消化
のまま排泄されます。WOW
 

この排泄されたた、所謂、猫の糞に
くるまれたお豆を綺麗に洗浄したのが、
世界最高のコ-ヒー、『コピ・ルアック』
なのです。

え~?美味しいの?と思いますよね?
えぇ、飲んだら、カンド~です。すごい
コーヒーです。コーヒー好きにはたまらん
ものだそうですが、香り好きにもたまらん
ですな。私はコーヒーも好きなので、
ウキウキでした。
ま、狭山茶一番、コーヒー二番ですが(笑)。
紅茶はねぇ、イギリスで飲むから美味しい
のです派。


生豆の状態と焙煎してからの状態の
お豆の香りの違いも試させて頂いたの
ですが、この麝香猫の生豆の香りの
素晴らしいこと、素晴らしいこと。生豆の
ままでもいい香りがするのです。
他のコーヒー豆の生豆は非常によいもの
でも発酵臭系に近いような重い臭みが
前に出ているのですが、コピ・ルアックは
美しい香りを放っているのです。
他のとは比べ物にならない。

これは、既に猫の対内で発酵されて
いるからだと。

そして、そのお味はと言えば、とても
丸いのです。コーヒーって、絶対に
どこかに尖った味があるのに、それが
ない。パーフェクトバランス。
このコーヒーは、コーヒーの伽羅では

ないかと思いました。
さすが、世界最高!

温度によって、味も香りも変わってくる。
そして、最後にカップに残った残り香は、
麝香そのもの。
 

体の中を通っただけで、あの香りが
カップに残るなんて。しかも、飲んで
いる時は、全く違う味なんですからね~。
すごいです。
これも、温めて楽しむ香りのある意味
一つかもしれませんね。

そして、コーヒーって飲んだ後、ちょっと
口の中に嫌な香りが残ったりする場合
がありますよね。でも、このコーヒーは
違うのです。ともかく口から花のような、
なんとも言えない芳しい香りがするの
です。

もちろん、マスターの焙煎+淹れ方が
絶妙なんだと思います。これが一番の
大事なところなんだと思います。
お湯の温度もベストなんだろうし。


お豆は高級品なので、きちんと証明書
が付いており、麻袋ではなく、麝香猫の
絵が描かれたキレ~な白い布袋に
入っています。
この袋、欲しいなぁ、って思ってしまい

ました笑)。
だって、いい香りするのですよ。

毎日飲んだら、体からいい香りがする
かって?多分、すると思います。
そして、フェロモンですから、男性は

女性にモテるかも~、しれません(笑)。

ただ、残念なことに2010年あたりから
よい豆が出なくなったそうで、同じ状態の

豆がなかなか見つからず、現在仕入れ
てないそうです。
2年前に講座の生徒さんと一緒に行った
時にも入ってなかったのですが、先日、
知人がお店に伺った際も、3年は入って
きていないと言われた~、と。
オリンピック的な時間の経過ですね。

ニワトリで同じことをしたコーヒーもある
と、最近、聞いたのですが・・・。
う~む、しかし、これは、美味しいコーヒー
になるのだろうか、と悩む次第でござい
ます。

コピ・ルアック、本当に美味しい珈琲。
またどこかで、いつか頂きたいものです。


Music: ”Bangkok Shocks, Saigon Shakes, Hanoi Rocks” - HANOI ROCKS 

2012年12月1日土曜日

和の香りの歴史【肆】

和の香りの歴史【肆】です。

の前に、平仮名か書かれた9世紀後半の
土器が結構な量で見つかったようですね。
http://mainichi.jp/select/news/20121129k0000m040087000c.html

どんなことに繋がっていくのかな、
って。とても楽しみです。


さて、前回の鎌倉時代からの続き、
時代は室町へと。


室町は、先日、訶梨勒の記事の際、
チラと触れましたが、室町時代って
質問したら、何が出てきますか?
応仁の乱?足利氏?金閣・銀閣寺?
などでしょうか?


そも、室町時代って、学校で歴史を
勉強する際、最初の南北朝のあの

系図を見て、こんなに覚えるのって、
大体面倒になり、「この時代、やだ~」
なんて思ったりしがちなのですが、
南北朝文化、北山文化、そして侘び
さびな東山文化と個性豊か。


そして、この東山文化の時代には、
現在の日本の伝統文化と言われて

いるものの多くが、文化として昇華
するのです。銀閣寺の足利義政の
お陰ですね。
応仁の乱起きてますけど~。

そんな訳で、改めて文化面からこの
室町時代を見直すと、意外と面白く
見れたりするのです。


だってね、阿弥衆という文化的なこと
をお助け申す集団もいたりしたとか。
全員美しすぎる男子にして、マンガ

にして頂きたい(笑)。

さて、香りの方は、いかに?かと言い
ますと、室町時代は鎌倉に続き武士の
時代。禅宗の影響もあるしで、やはり
シンプルな香木の香りだけを楽しむ
というスタンスは変わっていません。


ただ、この時代、香木の香りを楽しむ
上での大きな変化が起きます。それは、
香木に銘を付け、個体管理をするよう
になったこと、です。


ここに、佐々木道誉という武士が登場
します。時は室町時代に入ってすぐの

南北朝期。婆沙羅大名とも称され、
足利尊氏の永遠のライバルでもあり。
太平記にも登場します。

香りで注目なのは、太平記にも書か
れている大原野の花会でのこと。

な、なんと道誉、一斤(600~700g)の
香木を一気に薫いてしまうのです~。
しかも、この香木、どうも伽羅らしく。


凄い、としか言えないです。真似して
みたいですが、小さめなマンションが
買えちゃいますから、この量だと。
無理です・・・。


こんな破天荒なことをしてしまう道誉、
同時に香木も収集しておりました。
上述通り、お金に糸目をつけずです

から、収集する香木の量も半端ない。

なので、集めた香木、このままでは
どうにもならんとなったのでしょう。
きちんと管理をせねばならぬという

ことで、ここから産地やどこの港から
出たのかなどで分類され、銘も付け
られ、個体管理がなされるようになった
そうです。

正しいお金の使い方ですね!

この道誉による香木の個体管理が
あったからこそ、東山文化で様々な
ルールとともに、香道という文化へと
昇華していくのです。

そして、時を経て、江戸期に六国五味
(りっこくごみ)の分類へと繋がって行く
のです。

ちなみに、香り作りは前時代同様に
静かに続いてます。ただ、時代は武家。
公家の皆様は、何かと大変だったようです。


続く・・・。


Music: "Quiet Life" - JAPAN

2012年11月26日月曜日

宇宙の匂いと海の匂い

宇宙と海の中で同じことって
な~んだ?
あ、クイズでも何でもないですよ。

それはね、人間がそのままでは
呼吸できないこと。

すみませ~ん、こんな答えで(笑)。

以前、エキサイトのニュースでこんな
内容を読みました。


『宇宙って一体どんなにおい?』http://www.excite.co.jp/News/game/20120728/Kotaku_201207_what_does_space_smell_like.html

『宇宙はラズベリーの匂いがする』http://www.excite.co.jp/News/woman_clm/20120725/Gowmagazine_00001971.html

記事を読んでも、基本が超文系
のため、イオンと金属の反応とか、
マジわかりませんというオチに・・・。
化学反応するのには空気、というか

酸素とかって必要ではないのかな?

宇宙空間に香りが漂っているという
ことは、やっぱり空気はあるのでしょうか?
あっても異常な程に薄いから、宇宙服
への香りの移り方が強いのでしょうか?
違う意味での、わからないことだらけ。
そして、香りは早くNASAに再現して
もらいたいです。ともかく試してみたい。


ただ、ラズベリーのような酸味の
ある香りというのは興味深いです。
もしかして日本人ならラズベリー
ではなく、ゆずとかさくらんぼ
とか言うのかなと思ってみたり。

香りの感じ方は、食生活の影響も
多大にありますから。
なので、私は和の香りで日本酒
占いが出来ます(笑)。日本酒が好き
かどうかを当てることが出来るの
です。しかもこれ、結構な確立で

当たる!のです。

そして、そんな記事を思い出しながら、
人間が呼吸できない場所って水の中も
そうだなって思い。海に限らず、湖とか
沼もそうなるかと思いますが。
もちろん、プールに温泉、お風呂も
そうですよ(笑)。


温泉や水の匂いについては話題に
上るのに海の中の匂いのあるなしは、
なぜ言われないのだろうって、ふと、
思ったのです。


そしたら、そんな海の中の匂いって
どんな感じなのだろう、って、頭の
中を巡っています。


人が海の匂いと感じているものって
なんなのでしょうか。

以前、沖縄出身の方に排草香という
香原料の香りが、地元の海に抜ける
木の生えている道を歩いている時に
感じる匂いに似ていて、「この匂い、
めちゃくちゃ懐かしい~。地元の海を
思い出す~。」と言われ、「ほえっ?」
って思ったことがあります。

この排草香、草の根っこの部分なの
です。長らく土の中におりますから、
多少の土っぽさもある中、微かなミント
っぽいスーっとした香りと甘さを持って
います。


え~と、極端な説明をしてしまいますと、
昔、縁日で買ったハッカパイプ的な。
あんなスっと感と甘さがセットになった
ような感じに土っぽさ。

だから、海の匂いって、周囲に何が
あるのかの影響は大きいのかなと。
確かに潮の香りと感じる場合もあり
ますが、それってもしや、海の周り
のお店とかからも漂ってくる匂いも
含めになっているのではなかろうか

と思うのです。

でも、これらは海の中の香りでは
ないですよね。

日本の海と言っても、北海道と沖縄
では全然違うでしょうし。基本、塩分
なのかもしれないですが、他の海中
にいるものって同じではないだろう
から、海の中にもし香りがあったら、
同じにはならないのではないかな、
って思ったのです。

実際に、海の中の匂いを体感できる
のは、水の中で呼吸が出来るもの
だけなんだろうし。もし、何かを海に
つけて、それを地上に引き上げて、

その匂いを試しても、揮発性のある
ものから、どんどんと香りがあがって
いくから、海の中と全く同じにはなら
ないだろうし。

化学的な成分は分かっているから
合成で作ったとしても、それも、
きっと違うんだと思うのです。
それは、あの中でしか感じられない
のだと思うのです。
合成は、どうしても香りが本物とは
違うので。

なので、ドラえもんかハリーポッター
に頼んで海の中で呼吸が出来るよう

にしてもらうしかないんだろうな(笑)。

皆さんは、海の中の香り、どんな
香りだと想像しますか?もちろん、
最初に書いたように海に限らず、
様々な水の中でもよいと思います。
でも、沼の香りはちょっと怖い(笑)。
これはもう、子供の頃に見た、アニメ
の影響以外の何ものでもないですね。


何を中心にイメージするかで、香り
は全く変わります。私は海に潜った
ことは皆無なので、映像や写真から
伝わる、感じることでのイメージに
なりますが、色や生きている生物、
陸上での海の景色など様々なことの
何が自分の中に一番残るのか。

時間など色々なことから絞り込んで
いくとよいと思います。

そして、そこからどんな香原料を
使って、それを表現していくのかを
落とし込む。 ま、これは簡単には
なかなかいかないかとは思います。
この落とし込んでいくとこが調香の
醍醐味であり、妙でもあり。

ただ、このイメージ含めの香りの
創り方は、私独自のやり方なので、
???と思われる方もいらっしゃる
かなとは思います。私自身がかなりの
感覚人間なので、わかりにくかったら
すみません。(詳しく知りたい方は、
また、講座などにご参加ください。)

海の中が全く想像出来ない場合は、
こちらへ。
http://diveesp.exblog.jp/

先日、小学校の同級生で集まり、
当時、隣に座っていた男子(笑)が、
なんと、パラオ共和国を中心に

活動している魚類研究家に。
その彼のブログです。 海の中が、

色々と垣間見えてきます。

あ、ダイレクトにそのままをの香り
再現はイヤですよ~。特に温泉!
硫黄の香りそのもの再現には、
美しさがない~。それはダメ~。
せめて、お湯に入った時のその
気持ちとか、感覚とか普通のお風呂
との肌触りの違いとか、そういうことを
頭の中で再現してみることもお忘れなく~。
 

Music: "JAZZIN'" - United Future Organization

2012年11月21日水曜日

和の香りの歴史【参】

和の香りの歴史、参まで来ました。

平安時代の香りは、香原料を足して、
足して、のある意味のデコラティブな
香り。ともかくステキな香りを作る
ことに一生懸命、その研究にも余念は
ない。お陰で、今日があるのです。

ファッションでもデコラティブな流行
の後には、シンプルだったりアース
カラーとかナチュラル感が前に出て
きたりしますよね。今までとは真逆を
いくというか。

香りの流行も面白いように、それに

乗っています。
平安末期からの武士の台頭を経て、
鎌倉時代へと移ります。

舞台は鎌倉。
戦乱も落ち着き、文化的なことへの
動きが出てきます。当時、仏教では
禅宗が流行。今までの雅な世界とは
真逆な、"Simple is the best"な、
削いで削いでの文化へと変化して
いきます。

香りも同じく、香原料の足し算から
引き算へと。つまり、香木のみを薫く、
一木薫き(いちぼくだき)を楽しむよう
になります。

もしかしたら、公家の文化はわからん、
面倒!的なことがあったかもしれない
し、武家の天下となった今、前時代を
否定し、自分達で新しい文化を作って
いくのだ!という意気込みもあったで
しょう。香木を薫くだけの方が、正直、
調香するよりも簡単ですし。もちろん、
香木の香りは素晴らしいですよ!
そこんとこは、お間違いなく。

ただ、調香における香りの表現という
ことは不要になりますよね。
もしかすると、当時の武家にとっては、
そういう部分がよかったのかもしれま
せんね。

ただ、この時代は香木の個体管理を
しておりません。そのため、銘なども
ついておらず。そうなるのは室町に
入ってから。だから、沈香だけの香り
を楽しむとは言え、まだまだ香道には
いたっていないのです。
あくまで、AさんとBさんの持っている
香木、どっちの香りがい~いか?の
比べ合いです。闘香と言います。
平安時代に行った薫物合わせの香木
のみバージョンですね。
その他、十種類の香りを一つずつ
聞いていく十炷香(じっちゅうこう)と
いうものも楽しまれました。

もちろん、従来通りの練香の香りは、
静かに続いています。

私は香木も練香もいずれの香りも
好きです。
香木・伽羅に沈香、白檀の香りは、
それぞれに全く違い、そして、本当に
素晴らしいものです。

また、調香した香りには、そこに
表現や作者の思いが存在します。
それは、まるで香原料が生み出す
人生みたいに。香りから多くのことが
見えてくるのです。

いずれの香りの、豊かな自然がある

からこそ楽しめること。
自然の素晴らしさに感謝です。

香木・伽羅や沈香、白檀については、

また近いうちに。

 
Music: "The Spaghetti Incident" - Guns N' Roses

2012年11月19日月曜日

香りの距離感

香りの距離感。

香りは、相手との距離感をはかることが出来る、
と思うのです。

例えば、エレベーター内に残る香りがビックリ
する位に強かったら。

それは、多分、その香水をつけていた方の半径
数メートルが香っているのではないかなって思い
ます。その距離感たら、かなりのものですよね。

香水は水分ですし、揮発性があります。
つけ過ぎてしまうと、その揮発性から、広範囲に
渡って香りを放つことになり、ある意味、誰彼に
でも香りを放ってしまいます。獲物を捕獲する
範囲が広いとも言える?のかもしれない(笑)。

和の香りは、基本、何かに香りを移し、間接的に
使用します。その移すということでワンクッション
入り、強さが弱まります。匂い袋など、直接香り
聞くと強さを感じますが、これは、そのもの
自体香りを強くしないと香りが移らないからなの
です。
(あくまでも100%天然の香原料で作っている場合です)

また、水分は使用しておりませんので、揮発性が
低いということもあります。そのため、遠くで認識
できる香りを放つのかと言えば、なかなか難しい
ですね。

源氏物語宇治十帖のメインキャラの一人、自然と
からステキな香りを放つ薫の君に対抗して、
ともかく衣に香りを薫きこみまくっていた匂宮は、
どちらかと言えば、頑張っちゃったやり過ぎ系(笑)。
これだと、和の香りでも「む~」と思われてしまう
かな。
(衣に香りを移す際は、練香を使っています。)

だから、基本、ふんわり柔らかく漂う和の香りは、
相手とある程度の距離感がないとわかりにくい香り
とも言えるのです。

なので、たまに極端な言い方ですが、、
「和の香りは、
大人な距離感が計れるエロい香り!でもあるのです。」
な~んて表現をね、してみたりもね、しています(笑)。

だから、
「○○さんって、いい香りするよねぇ。なんて会話を
してみたら、他の人は気付いてなかったなんてことが
わかったら、それはもう、他の人とは違う特別な
距離感にある訳で。フフフ。

そんな距離感で、気になっているお相手なら、あとは
自分でどうにか頑張ってくれ、的なね(笑)。

話がそれましたが、枕草子にしろ源氏物語にしろ、
やはり古の頃より、香りのさせすぎはあまりステキ
とは思われていないようです。

他者への気遣いがある和の香りで、周囲も心地よい
香りの距離感を楽しんでみてくださいね。
(気遣いが出来る和の香りについては、また、後日~)


Music: "Vanessa Paradis" - Vanessa Paradis 

2012年11月14日水曜日

訶梨勒(かりろく)


和の香りの歴史【弐】にちらと記載を
いたしました『訶梨勒(かりろく)について。

上の写真は、もう4年以上前になるので
しょうか。知人のお母様がお持ちの
訶梨勒(かりろく)を撮影したものです。

部屋に掛けるものを総称して掛香とも
言いますが、訶梨勒はその中の一つ
でもあります。

ただ、ちょっと普通の掛香とは異なる
特徴を持っているのです。

さて、上の訶梨勒の同封説明書きに
よりますると、

「後土御門院の御宇文明年間に足利義政が、
香道の祖・志野宗信に依頼をして調達、
その後、後花上皇に奉進」
(あ、またも端折ってます。。。) 

と、あります。
まず、これ、いつ頃かと言いますと、
文明というのが1469年~1491頃。将軍は、
義政から義尚と二代に渡ります。
後土御門院の在位期間は、1464~1499年。
(歴史の資料集で確認したので、大丈夫、な
はず!)

ちなみに応仁の乱は、1467~1477年。
文明年間というのはドンピシャ状態で。
京の町も戦乱に巻き込まれ、かなり荒れ
たのではないでしょうか。

そんな時期に、足利義政好みとして作ら
れた訶梨勒のレプリカの写真なのです。
あぁ、本物ではないですよ~。だとしたら、
布がきれいすぎるし~。

「悪臭を消散し邪気を駆除し毒蟲を殺りくし、
身体を健全にし心身を爽快ならしむ」

という効能も書かれております。スゴイ効能
じゃないですか!しかも、毒蟲を殺りく!
どんだけ除けたのでしょうか・・・。

また、当時は「訶黎勒」「霊絲勒」とも呼んで
いたとあります。

この訶梨勒を吊るす時は、写真では曲げて
いますが、五色の紐は垂れ下げて吊るします。

ここまで読んで、そも訶梨勒って何よ?って
思いますよね。

掛香の一つでもありますので、巨大な匂い袋
を、お部屋に掛けて香りを放つという簡単な
イメージを持ってください。そして、訶梨勒の
場合は、そこに邪気を祓う意味が加わって
くるのです。

そも、なぜ、訶梨勒かというと、インド地方の
木から採れるカリロクの実が使用されている
のと、その見た目の形が、その実の形を模し
ているところがポイントなのです。

このカリロクの実は、水毒を解くということ
から、漢方でも使用されています。鑑真和上
が渡来の際に、漢方薬の調合をもたらしたと
掲載しましたが、これらと一緒に伝わったよう
です。

この毒を解くという効能から、乾した実を部屋
に掛け、邪を除けることが始まり、本物の実
ではなく、その代わりに象牙などでカリロクの
実の形を模して飾ったりもしていたようです。
これ、今は、無理ですね。ワシントン条約に
引っかかります。

香原料としては、どんな香りかと言いますと、
ものすごく強いとか癖があるという香りでは
なく、ただ、何だかわからないけど不思議な
柑橘系の酸味があります。それが清涼感に
繋がったのではないかなって思います。
調香の際にどういう香りとして使用している
のかは、それは申し訳ないのですが、
企業秘密だし、ぜひ、調香の講座にご参加
下さいね。

「それなら、匂い袋をそお部屋に掛けても
いいの?」って思われますよね。
答えは、OKですよ!

ただ、基本は訶梨勒の調香をしているもの
ではなく、普通の匂い袋かと思いますので、
邪除けなどということではなく、単純にお部屋
の香りとしてお好きな場所に置かれるのが
よいと思います。ベッドサイドなどに置いて
おくと、よく眠れる~、目覚めがスッキリする、
など色々なご感想を頂いてます。

もちろん、香原料には虫よけ効果があるもの
もあります。だから、衣装につく虫を除ける
ため、匂い袋は昔から使用されているの
です。

あ、先日、中学時代の同級生の娘さんに
彼氏が出来たらしく・・・。
そういう虫除けには使えないですから~(笑)。

お部屋がステキな香りだと、気分はなんだか
よい感じになりますし、今の時代は除けるとか
ではなく、ご自身のための香り、我が家の
ステキな香りなどの意味でご使用されるで
よいと思います。

それから、衣装回りだけではなく、ビジネス
シーンでも香りは色々と使えますよ。
これは、また次回に!

こんな時はどうなんだ、というご質問など
ございましたら、ご遠慮なくどうぞ!


Music: "Brick's Song(re-rec)" - The Brick's Tone

和の香りの歴史【弐】

早いもので、もう、11月も中旬。
この間、ハロウィンが終わったのに、
もう街はクリスマス。そしたら、今年も
一年が終わるのかと思うと、ひょえ~
思う日々でございます。

さて、和の香りの歴史【弐】です。

平安時代に入ると、途中から遣唐使も
廃止し、それによって国風文化が栄える
ようになってきます。
他国との付き合いもなくなり、自国のことだけを考えていればよいから、以前よりも
公家には時間も出来る訳ですね。
だから~、色恋ごとに頑張っちゃう、まさに
源氏物語の世界に突入で~す。

いかに自分をよく見せ、相手にアピるのか。
いつの時代も同じことで悩んでいること
しょう。
送ったりしても、相手は御簾の内。
うまくいき、夜の闇の中、忍び込めたとしても、
実は、一体どんな人だかよくわからんとですね。
これ、源氏物語の中でもでも出てきますよね。
相手は、実は恋多きおばあちゃまだったという
オチの。

では、他の人との差別化をするために、
何が番効果的だったのかと言えば、
それは香りです。御簾の内にいたら、
様子なんかわかりません。夜に忍び
込んでも、灯りなんてないです。闇です。
そんな中、一番最初に認識するものって、
香りなのです。

当時、香原料となる香木や漢方薬は、
日本で取れるものではなく、全てが
今で言うインポートもの。だから、基本に
高価なもの、手に入らないものという
ベースがあります。
つまり、手に入れられるということは、
富と権力の証でもある。

富と権力を持ち、素敵な香りを調香
するセンスを持ち、その香りを実際に
纏っていれば、
「この人ったら、一体どんな人なの~?」
って、相手の好奇心を思いっきり掻き
立てることが出来たっつう、香りとは
なんとも素敵な恋愛ツールの一つでも
あったのです。

ただ、それだけではありません。当時は
香りで邪を避ける、浄めるなども考えられ
ていました。かなり大きなサイズの匂い袋
思い浮かべて頂きたいのですが、それを
部屋に吊るして、訶梨勒(カリロク)という
ものを邪除けに使用したりしています。
これについては、写真と一緒に別記事で
ま、何かと言えば方角が悪いと、方違えして
いる時代ですからね。
また、匂い袋も虫除けとして使用されて
いたり、練香を空薫きすることで、お部屋の
香りを変えてみたり。
香りは、日常で使用されていたのです。
 
衣装に香りを移す方法は、伏籠内に香炉を
置き、上に衣装を掛けます。それだけです。
香炉から芳しい香りがあがりますので、
それが移るのです。基本、直接、体に香りを
つけることはしません。

ただ、当時、女性は一年もの間、髪の毛を
洗うことが出来なかったので、髪に香りを
薫きしめていました。一年も洗えなかったら、
そりゃ、香りも移したくなりますわなぁ、って
心から思います。

他にも『躰身香(たいしんこう)』という飲んで、
香りを体から放つものもありました。かの
楊貴妃も飲んでいたと言われています。
抱いていた赤ちゃんに香りが移る位、香りが
出ていたようです。
現代ですといい香りを体から出すという
物には、ローズの香りのサプリやお菓子
などと同じ考え方のものです。そんな昔
から、あったのですよ。

飛鳥・奈良時代での仏のための香りが、
平安期には自分自身を演出するための
香り、遊びとしての香りという位置づけが
現れ、薫き物合わせなどに進化していく
のです。

薫き物合わせの際は、練香を沈香で
作られた箱に入れたり、瑠璃の器に
入れたりと趣向を凝らし。贅沢です!
源氏物語の中でも描かれております。
 
でも、本当にすごいことは何かと言えば、
当時の人は、香りの中に世界を見出し、
香りで何かを表現することを雅な遊びへ
と昇華させたこと。これは、他にはない
日本独特の文化となっています。
 

表現に枠を作らず、常に自分自身を開き、
様々なことを当時の人は、感じていたの
ではないでしょうか。

基本的に平安期の香りは、デコラティブ
ファッションのような、足して、足しての
香り。唐より伝わる珍しい香原料を使って、
様々な香りを調香するのが楽しくて、
楽しくて仕方がなかったんでしょうね~。

鎌倉時代になると、ファッション同様、
香りの文化も違う流行へと移っていきます。

それは、また、この次に!


Music: 『さよなら、夢』-青木孝明 

第12回 香りの彩時記【 香進】が始まりました!

パレスサイドビル1Fの毎日文化センターの近くを歩いていると、何となく感じられるいい匂いの季節になりました。 今年も毎日文化センター和の香り講座の受講生による作品展が始まりました。 今回の参加者は2名ですが、それぞれの作品への思いが見えてきます。 作品展タイトルの「香進(こうしん)...